家出
あんな家には帰らない
あんな家庭(いえ) もういらない
そう決意して飛び出してきたのに 行き場がなくてとても寒い
お母さんは どうして私の言葉を聞いてくれないの?
お父さんは どうして私と目も合わせないの?
「お前の好きにすればいい」 そう言いながら 最後にはいつも止めようとするよね
普段は気配も見せないのに 踏み越えようとすれば邪魔をする壁
そんな感じでイライラする
でも わかってる
結局は逃げ出してきた私に 二人を責める資格はないこと
大人になったと認めて欲しいなら 二人のことばかり責めるのはおかしい
わかってるよ わかってる
でも 私の中で泣いている子供が 思い通りにならないと癇癪を起こすの
私を育ててくれた人たちは 本当は ただの人間で
私はそのことを責めたくせに まだ守ってもらいたがっている
なんて身勝手 なんて幼い
座り込んだ家の隙間
抱えた膝の向こうから聞こえる かすかな かすかな 幸せの声
あれは誰? って ぼんやり 考える
何も知らずに笑って
いつまでも今のままだって 無邪気に信じてた子供は
暗くて狭い 先の見えない場所で
今
「あの時の子供は消えてしまったよ」
「あの時の子供はもう『お前』じゃないよ」
って 囁く声を聞いた
わけのわからない気持ちで
進めない自分に腹が立って 八つ当たりできる「何か」を探している
もう あのときの子供ではないから
あのときの子供ではいたくないから
抜け出そうとするのだけど 足元をすくわれて身動きが取れない
ときどき足が自由になっても 行き先が分からなくて歩きだせない
どうしたいの、私?
何処へ行くの、私?
なぜだか 今
切なくて
声を上げて、子供のように泣いた
昔よりもずっとずっと、涙は苦くて重かった
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